天涯の花

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その嘉の献身は 村のそこかしこに見られた。 出征して男出のない家には 夜中、そっと薪を割きおき… 病人のいる老人宅には 知らぬ間に米を置いてくる。 そんな嘉の心配りに 忠晴の家族は無論のこと、 雇人や村の誰もが 忠晴の回復を 祈るようになっていた夏… 戦争は終わった。 小作解放はこの山村も執行されたが、 財の多くは林野である 眞島家の庇護の(もと)…… そこに戦さがあったのも、 マッカーサーが来ようと来まいと、 何も変わらぬ山のまた山の奥。 春夏秋冬がまた巡り… 出征兵士が帰還して、 村祭りが再び開かれて… それぞれ嫁にいった 女相撲の力士が子を産んだり…    戦後四年はすぐに過ぎ…。   
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