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忠晴の一つ下、弟・宗晴の
縁談が決まり、母屋は華やいだ様子。
しかし、安穏に華やげるのは
絶望視されていた忠晴の
回復ぶりにもあった。
大安吉日のある日、
一台の自動車が門をくぐると
上品な中年夫婦と
嘉と同じように背の高い娘が
車寄せに降り立った。
自分達の離れの門から
車を迎えていた忠晴と嘉が
丁寧に頭を下げると
向こうの三人も丁寧に頭を下げ、
「忠晴くん、加減が良い
そうじゃないですか?
学問は進んでいるかい?」
その上品な男性がそう言った。
「…いえ…あの…」
口籠る忠晴に
「それはいけないよ、
京都の北上博士も
君の復学をお待ちだ。
気を奮わせなさい」
優しく言って中へ入った。
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