天涯の花

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来客は宗晴の婚約者と その両親だった。 山一つ向こうの和泉の方方。 忠晴に声をかけた父親は、 宮内教育の儒学者で、 戦後処理の務めの(のち)は隠遁。 「京都の大学で…僕の恩師の  友人なんだ…」 嘉に説明したあとで 「しまった…礼を忘れた…  あの松堂(しょうどう)先生のお陰で  手に入らない貴重な薬も  よい医師にも掛かれてるのに」 失態を悔やむ忠晴が 恥をかいてはならぬので、 その旨を紙で久里に告げ、 嘉は裏山へ蕨を取りに出た。
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