天涯の花

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紀州の山は 材にするも炭に転じるも、 茸や蕨と、食にも困らぬ 豊穣の山。 忠晴の食がより進むよう、 嘉は山菜取りにも足繁く。 川辺りでちょいと休憩に 腰を掛けたところで 「こんにちはぁ」 若い女性の声が対岸でした。 「 あっ ?!」 女性は宗晴の婚約者。 「これは鈴子さま」 嘉は即座に立って頭を下げた。 「“さま”なんて要らないわよ」 気さくな笑みで淡い桃色の ワンピースが華麗な鈴子。 (やっぱり東京の大学へ  通われてる方は  ちがうんだなあ…) 魅せられる嘉に 「嘉さんでしょ?」 鈴子は親しげに名を呼んだ。
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