天涯の花

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「“はーと”…?」 食事の後…不意と その言葉が思い返され、 「坊ちゃま“はーと”とは  どんな意味でしょうか?」 「“はーと”?英語の?  “心臓”とか“心”  “恋心”とかも訳せるね。  それがどうかしたんか?」 「あ、いえいえいえ」 赤い頬を気づかれぬよう 嘉は井戸へ小走り。 (そうか…私の“はーと”は  忠晴さまに盗まれたんだ!) そう再認識すると嬉しさが その“heart”に満ちた。 けれど… 松堂氏に言われたことが 刺激になったのか、 仕舞い込んでいた学術書を 熱心に読む忠晴の背中を見て (この方は…“分不相応”な御方) 嘉の“恋心”は 春の霞に…      ぼやけてゆくのであった。
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