天涯の花

24/34
前へ
/36ページ
次へ
(“heart”…“恋心”…)  井戸端で懸命に働く嘉の背を 眺める忠晴の夜は さざ波に浮かぶ小舟の心地。 (でも…いつまでも…こうはいかぬ) そこが悩みどころ。 嘉ほどに体格は良くないが、 スラリと背の高い鈴子と並ぶ 柔術に長け頑丈な弟・宗晴… 忠晴は“ちっぽけ”な自分を 惨めに思った。 (多少良くなっても  やはり家の厄介者か) いつもの卑屈が湧いてくる… が、即座に (腹が減った…) 最近食欲がある。 目方も増えた、 高熱を出すことも二年ない…。 冷静に最近を振り返ると 卑屈は薄れていく。  「和歌浦の病院で   新しい治療に専念しては?」 医師から勧められている提案があった。 (まずは嘉に釣合うくらい  健康にならねばならない) …忠晴は決意した。    
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加