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(“heart”…“恋心”…)
井戸端で懸命に働く嘉の背を
眺める忠晴の夜は
さざ波に浮かぶ小舟の心地。
(でも…いつまでも…こうはいかぬ)
そこが悩みどころ。
嘉ほどに体格は良くないが、
スラリと背の高い鈴子と並ぶ
柔術に長け頑丈な弟・宗晴…
忠晴は“ちっぽけ”な自分を
惨めに思った。
(多少良くなっても
やはり家の厄介者か)
いつもの卑屈が湧いてくる…
が、即座に
(腹が減った…)
最近食欲がある。
目方も増えた、
高熱を出すことも二年ない…。
冷静に最近を振り返ると
卑屈は薄れていく。
「和歌浦の病院で
新しい治療に専念しては?」
医師から勧められている提案があった。
(まずは嘉に釣合うくらい
健康にならねばならない)
…忠晴は決意した。
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