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家からは車で二時間以上かかる
景勝地の和歌浦。
忠晴は病院に入り、
嘉は眞島家の親類筋の離れを借り、
半年目途の闘病に入った。
病院通いの嘉は
ここでも他人とは距離を
おいての暮らし。
そのくせ、目立たぬように
庭掃除や畑の草抜きなど
出来る限りの働きをして
「嘉ちゃん、病院以外では
手足を休めなさいな」
家人にも親切な注意を受ける程。
そこでは……
嘉の日課が一つ増えていた。
病院帰りには六十以上の段を登り、
紀三井寺にて
(坊ちゃまに“鋼”の身体を!)
忠晴の平癒を一心に祈願した。
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