天涯の花

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手を引かれ… 大広間へゆくと… 「かかさん!ととさん!」 女相撲の小屋主夫婦が 嘉の親席に、 「よっちゃん!!」 姉妹の席には同じ村に 嫁いだ二人が。 「ありがたやぁああ、ありがたやあ。  旦那様が呼んでくださったんだ」 小屋主夫婦と“姉妹”の二人が 当主の和晴を拝むように見ると… 「なんの不思議がありますか…  只今ここに…」 嘉と同じように 呆然と婿の座にいる忠晴を、 和晴が目で指した。 「我が息子がここに座れるは  嘉の献身あればこそ、  親にも出来ぬ献身でございました。  思えば女房は皆“力士”、  家を支える関取です。  なかでも心技に優れたる  名横綱の嘉なくして  何故にこの忠晴が当主を  務めてゆけましょうや」 「父さん!!」 覚悟していた“不孝”の下座は、 額をあげれぬ感謝に転じた。 同じく頭を伏した嘉は “分を越えたる千秋楽”と 塩を涙にした。    
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