天涯の花

32/34

77人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
翌年に京都の大学へ 戻った忠晴は、 学位を修め、教授となり、 三男二女の親にもなれた。 紀州に戻っても睦まじく暮らしたが、 働き者の嘉はやはり働き者で、 学問一筋の夫に代わり 林野を駆けて、田を駆けた。 あいも変わらず贅沢など望まぬ嘉が、 ただ一つ強請ったものは、 植物学に貢献した忠晴の 受勲の日の着物だけ。 忠晴が嘉の着物に描いた花は cc2b5efb-421f-4ff5-8fc1-c4a19d864b64 賢婦人の裾を 慎ましくも誇らしげに揺らせた。 そして……
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加