天涯の花

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(まったく何が“大日本”だ、  貧しく食えないもの  ばかりが増える…情けない…) ここまで思ってから (病んで“家の厄介者”の俺が  情けないとは可笑しい…) 自嘲の笑みの後は咳。 (少し血痰も出る…  こりゃ長くない) 次には泣き笑いの忠晴。 子供の頃から病弱で 流行り病いは何でも貰った。 庄屋の長子としては最悪。 学問の出来るのだけが救いで なんとか大学までこぎついて 好きな植物学を学び始めた 矢先の肺結核。 (なんだよ…死ぬために  生まれてきたようなもんだ) 卑屈にならざるを得ない 六畳二間に風呂と厠に 簡単な土間の離れ暮らし、 書物と好きな植物だけが友。
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