プレゼントの行方

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「理沙、こっち」 車から降りた悟が私を呼ぶ。 バス停に並んでいる人の視線が気になって、列から外れて移動した。ガラガラ音を立てているスーツケースがさっきよりも重い。 いつかは話さなきゃって思ってたけど、それは今じゃなかったのに。 「それ車に乗せていい?」 顔が見れなくてコクンと頷くと、私の手から離れた。そのあとに聞こえたトランクの開閉音。 「寒いでしょ。乗って」 助手席のドアを開けてくれて、その時に一瞬だけ悟の顔を見てみた。笑ってはいるけど悲しそうな表情。 「こんな時間にどこ行くつもりだったの?病院やお店、じゃないよね?答えてくれないなら適当に走らせることになるけど」 「…………実家」 「ってことは駅に向かう予定だった?」 再び頷くと、ゆっくり車が走り出した。 それ以上は何も聞かれなかったから、車内はずっと静かなまま。 「時間大丈夫そうなら話をしたいんだけど、乗降場所じゃなくてコインパーキングに停めていい?」 「……いいよ」 良かったって悟が呟いたけど、何もいいことなんてないよ。今、会いたくなかった。
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