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「…ハルちゃん…」
「はい」
「…なーに!?このナイスバディでエクセレントな顔のウォトコは!」
「刈谷嶺二くんです」
社長の顔に似合わないキャラとキラキラと俺の横に片膝を着いて手を揺らす遼の姿両方にドン引きしていると社長がこちらに近づいてくる。
顎を掴まれて鼻先が触れる距離で顔を見られるが視線を逸らしたら負けだと思いじっと見返す。
「どうですか?」
遼がにこにこと笑みを浮かべながら社長に問う。
「いいんじゃない?顔も体も綺麗で」
もみもみと尻を揉みながら遼に笑顔でそういう。
とまあそんなふうに社長に気に入られるという第1関門を無事尻と引き替えにクリアした俺は、その日のうちに誓約書にサインし一年半という短いエスケープを経てこの世界にまた舞い戻った。
「君はただここでダンスと歌に専念していてくれればいい」
それから3日後。連絡を受け遼の車に乗せられ連れてこられたのは練習生時代でもデビューしてからも見たことのないくらい完璧な設備の整った施設の一室だった。
「え…ここって」
思わず洩らした言葉も、ただの呼吸ですら反響してしまう程の広いレッスン室を見回して思わず唖然とする。
「うーん…やっぱり狭いかな」
遼のつぶやきに思わずはぁ?と声が出る。
「ごめん、本当はこの施設ごと買い取りたかったんだけどどうしても横の繋がりが強固な業界で難しくて、あのジョニーグループの練習にも使われてるみたいで…」
俺の反応を勘違いしたのか、整った色素の薄い眉を八の字にしながら早口で捲し立てる目の前の男に若干引いた。普段あまり動揺することのないこの俺が!正直滅茶苦茶引いた。
「でも、君がどうしても狭くてやりにくいって言うなら少し時間はかかるかもしれないけど!」
ぶつぶつと顎に指を添えながら呟いていたかと思うと今度は決意を固めたようにサラリとした髪を揺らしながら勢いよく顔を上げてとんでもないことを言い出しそうな薄い唇の前に手でストップをかける。
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