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休日の朝、早朝に行けばバイト帰りの啓司に会えるかもしれないと期待を胸に、光瑠はコンビニへ出かけた。
自動ドアが開き中へ入ると同時に、「いらっしゃいませ」という啓司の声が聞こえてくる。
レジの方へ視線を向けると、光瑠に気づいた啓司が軽く頭を下げてくるから、つられるように頭を下げた。
渡せるかもわからないけど、バイト終わりに水分を取ってもらえたらとペットボトルのスポーツドリンクを二本とパンを二つ手に持ってレジへと向かう。
「いらっしゃい」
「おはよう。バイトもうすぐ終わるだろ?」
「ああ」
「じゃあさ、久々に行かない?」
「公園の裏庭?」
「そう」
「あそこ、まだあるんだ」
「そうなんだ。どう?」
「行くよ」
「じゃあ、中で待ってる」
「わかった」
会計をしながら会話をして、何とか約束を取り付けた。
まさか、自分にこれほどの行動力があるなんて自分自身が驚いている。
だけど、せっかく再会できたのに、何もしないよりは何かした方がいい。そう思うから……。
スタッフルームで一息つくと、ホッとしたのか眠気が襲ってくる。
それでも寝てたまるか精神で、啓司が戻ってくるのを待っていた……つもりだった。
「……つる……みつる……」
遠くに聞こえる光瑠を呼ぶ声に、意識がハッキリとしていく。
背中に軽く乗せられた手が、そっと光瑠を揺すっていて、ゆっくりと目を開くと、覗き込むように啓司が立っていた。
「あっ、俺……寝てた?」
「みたいだな」
「ゴメン……。お疲れ様」
「お疲れ。どうする? このまま行く? それともまた今度にする?」
「行く!」
「了解。じゃあ、すぐ着替える」
「うん」
光瑠に背を向けて自分のロッカーへ行き開けると、制服を脱いでハンガーを掛けて、鞄からTシャツを取り出し、着ていたシャツを脱いだ。
薄橙色の素肌が顕になり、光瑠は慌てて視線を逸らす。
ドクドクと一気に心臓が脈を打ち、身体中に熱を持つ。
あの頃とは違って逞しくなった身体つきは、一瞬で光瑠の目に焼き付いてしまった。
「お待たせ。行こうか?」
「う、うん」
振り返ることはしないで先に店から出ると、その後ろから啓司の足音が聞こえてくる。
しばらくして、ようやく気持ちが落ち着いてきたこともあり、歩く速度を遅めると、離れていた距離が0mになって隣に並んだ。
「相変わらず早歩きだな」
「別に、そんなことないけど……」
「昔から、隣に並ぶまでに時間掛かってた気がするし」
「そう?」
気づいてたんだ……俺が歩くの早かったこと。
あの頃から、俺は啓司と並んで歩くのが恥ずかしくて、ドキドキする心臓の音が治るまで少し先を歩くようにしていた。
そして今みたいに落ち着いたら、歩くペースを落として隣に並んでいた。
そうしないと、自分の心臓の音が、聞こえてしまう気がしていたから……。
執筆時間…6月24日、7:20〜7:50、17:40〜18:00
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