1 アメリアは看板娘

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1 アメリアは看板娘

「……そんな、ごちそうになるわけには」 「もともとお礼にお誘いしたんですから」 「でも、デザートまで」 「僕が勝手に頼んだんです。男一人で頼むわけにもいかず、これ季節限定だって聞いたから」 (がんばれー―ー!デンバーさん!) ランチタイムが落ち着いて、やっと二人の様子を見ることができた。文官のデンバーさんと、王城のメイドさん。 あ、申し遅れました。私はこの店『エデン』の店員、アメリアと申します。 デンバーさんはよく来てくださいますが、お相手の女性は初めてです。 デンバーさんが先月、意中の女性との初めての食事について迷われていたのでアドバイスさせていただきました。 「付き合ってるなら遠出もありですけど、お礼に夜の食事はちょっと……重いかもしれませんよ。うちの店にも可愛いランチありますよ。デンバーさんは唐揚げ定食ばっかりですけど。デザートも今なら季節限定のコレ!うちみたいな、ふつーの定食屋さんなら女性も入りやすいです。」 「でも、男性多くないですか?めったにここで女性見ないんですけど、量も多いですよね」 「デンバーさん、うちの店舐めてます?」 「いえ、量が多くて安くて、助かってます!唐揚げ最高で……」 「いや、そうじゃなくて。量が多いということは! ……仲良くなったら、単品を頼んでシェア出来るんですよ……!わかります?」 「シェア……!いい……!」 「そう!親密度アップ。まあそれは二回目以降の夕食で。しかも、揚げたてなら、ふーふー、あちっ、という普段お仕事では見られない表情が」 「この店でお願いします……!」 という会話をしたものの、気になっていましたが。デンバーさんはメイドさんをうまく誘えたようです。良かった良かった。 王城勤めの方ってお忙しいのでけっこう食事がおろそかになってしまうようで。さりげなく野菜を添えたりスープも栄養バランスを考えてるんです。サラダを増やして、だんだん女性のお客さんも増えてるんですよね。 華やかな王都といっても貴族だけが住んでるわけじゃない。貴族が買い物をするエリアは大通りが整備されている。そこよりも王宮に近いところに、意外と庶民的な一画があって。 王城に勤める者のための店が並んでいます。 夜には酒を提供する店もあるけれど、騎士団がそこらじゅうをウロウロしているので基本的に治安が良い。 もっと色っぽい店に行く男性は、始めから王都のそういうエリアに行くのだろうし。 アメリアが働いているのは、ごくごく健全な店だった。 手頃なランチと、夕飯時にはツマミとお酒。 そんな店で人間観察、とくに男女の恋愛を見るのがアメリアの一番の楽しみだった。 でもアメリア目当てのお客さんの想いには鈍感なので、店の大将とおかみさんには呆れられています。 明るい茶色の髪を高い位置でくくり、接客をする度にくるんと弾ませて。新緑のような瞳を好奇心でキラキラさせて。誰にでも屈託がなく明るい。 「お仕事お疲れ様です」 たまに帰り際に飴をサービスされれば、ファンが増えている。 「あ、アメリアさん、好みのタイプの男性は?」 「んー、よく食べる人ですかねー」 「唐揚げ追加で!!」 「こっちも!」 「良くできた子だよ……ほんとに」 大将とおかみさんは、アメリアの幸せを祈っているが、しばらくは彼氏作らないでほしいと思っていた。
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