6 ランチに来る友達が居たんですね

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6 ランチに来る友達が居たんですね

いらっしゃいませ、と笑顔を向けて、席に案内しようとした手が止まる。 入ってきた二人組の男性に、目が縫い付けられたようになってしまう。 背の高い黒髪の男性。 うつむいているけど、きっとあの人だ。 手前にいる茶色の髪の男性に席を案内する。 後ろにいる彼の姿をあまり見ないようにした。 奥の席に案内して、水を配る。 彼から視線を感じる。 すぐに離れた。 「アメリアちゃん、どうしたの」 「いえ、なんでもないです。ちょっとお水いただきますね」 「しばらく座ってていいよ、ついでに休憩したら?」 おかみさんから、暑い時期は休憩時間以外にも時々座って水分補給をしたらいいと言われている 大丈夫です、と笑って誤魔化した。 アメリアが慌てたのは フレデリックがまだ早い時間とはいえランチタイムに来るのが初めてだったからだ。明るい賑やかな雰囲気の店内に似合わないから。 それに誰かと来るのも。 同僚の方だろうか。人の良さそうな……フレデリックとは似ていない感じの。 まあ似ている同士が気が合うとは限らない。彼みたいな人が二人もいたら空気が暗くなってしまうにちがいない。 茶髪の彼が手を上げたので注文を聞きに行った 「ランチのAセットと、あと単品でおすすめありますか?」 「そうですね、こちらの唐揚げは単品で足される方が多いです。チキンの胸肉を使用しているので、わりとあっさりしています。こちらの香草焼きは脂の多い部分を使っているのでビールに合います。夜の時間帯には人気です。あと、揚げたポテトはすぐに提供できますので、メインをお待ちの間にいかがでしょうか」 「じゃあ、その唐揚げとポテトをお願いします。 フレディは?」 フードを被っていないので、髪の毛が見える。 サラサラだ。頭の形が良い。 「卵のスープ」 見上げてそういった。前髪がさらっと流れて、紫色の目がアメリアをしっかりと見ていた。 ーーーーーーーー 「いやー、アメリアちゃん、しっかりしていて可愛いし明るいし。この店人気あるのわかるわー」 マーカスが水を飲みながら店内を見渡す。 「ちょっとした打ち合わせとかに使わせてくんねーかな。」 「何でお前みたいに僕は頼めないんだろうな。もっと食べられたら彼女と話せるのに」 「業務内容で会話しても嬉しくないだろうが」 「そんなことない。彼女がメニューを読んでくれる声だけでも一晩中聴いてられる」 「一晩中そんなくだらんことさせるな」 こいつやべえ。 「そうだな。どうかしてた」 わかってくれたらいい 「録音装置を開発しないと」 ますますやべえな。 料理が運ばれてきた。 マーカスはランチの量の多さに喜び、フレディは卵スープを一匙ごとに幸せを噛み締めるように味わっている。 「フレディお前、いつから少食になった?魔術学生の時はもっと食ってたよな。育ち盛りだったのを差し引いたとしても」 「塔に入って、だんだん食事の度に降りるのが面倒になって焼き菓子とか携帯食料を備蓄するようになって、 そのうち食べなくても平気になった」 「ギリギリ生命を保てればいいってことだな。 食に対する喜びを知らないと。 ああ、それはお前人生損してるわ。 見ろよ、このランチの皿の中にも、味のバランスとか食感とか、いろんな工夫があって、一番旨いタイミングで出してくれるんだぜ。 わざわざ店に来るってそういう価値があるんだ。 それを面倒のひとくくりで押しやって、もったいねー。 アメリアちゃんもそう思うよねー?」
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