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8 お弁当
女将さんが朝から弁当の用意をする。
ランチタイムと平行して行うが、前もってわかっていれば数が増えたところで忙しさには影響がないとわかった。
テイクアウトは王宮勤めの人には人気で、日替わりランチ弁当は順調だった。
また、仕込みの量も前もって調整できるので廃棄する量が減ったそうだ。
今日は、フレデリックがお弁当を頼んでいる。
接客をしながらそわそわしているアメリアを女将はニヤニヤして見ていた。
毎回、フレデリックが弁当を受けとるときにアメリアから渡せるようにしている。
その時の二人のなんともいえない初々しい甘酸っぱい感じが微笑ましく
「いや、最初はほほえましかったんだけど、最近ちょっとイラッというか、モヤッというか」
「わかります!」
マーカスが職場の人の弁当を20個抱えながら共感する。
「なんで、進展しないんですかね」
「うーん、私らが過保護だったのかもね。母親が知り合いでアメリアのことを頼まれたもんだから。恋愛に臆病になってるのかもしれないね」
「フレディもアレはアレで、恋愛以前と言うか」
フードをとったフレディは女性から急に注目を集めている。
外見が良い。
塔の変人魔術師の噂は有名だが、顔が良ければ好意的な解釈をされている。
だからといってフレディの性格が変わるわけもなく、女性に話しかけられる度に吐き気を催し、ろくに返事もしない。
それがなぜか
「かわいい」
「餌付けしたい」
などと余計に加熱させている。
「解せぬ……なんであんな非友好的なのにモテるんだ」
魔術師から羨ましがられている。
その本人は、
「アメリアからお弁当をもらうなんて夢のようだ、あー、もっと空腹にならなきゃ」
と、昼のために早朝五時から騎士団や魔術師団の雑用を、手伝っている。
マーカスが、魔力を使えば腹が減るということを教えた。というか思い出させた。
そう、食事が面倒だからカロリーを消費しない魔術の術式を無意識に身につけてしまっていただけで、普通以上に使えばカロリーを必要とする。
塔の妖怪、都市伝説になる前の普通の体の仕組みを思い出した。
女将は、そろそろなんとか進展してくれとの思いからある行動に出た。
「あの、お弁当を頼んでいた……」
毎回、律儀に名乗る。
マーカスなんて、
「やっほー、女将、出来てる~?」
なのに。
アメリアが応対する。
お弁当を渡して、代金をもらう。
女将は、もうひとつお弁当を渡した。
フレデリックに渡した。
「アメリア、今日のまかないはお弁当にしたから今から休憩行って!」
「え、」
「いま、庭園が自由解放だよ。一緒に行ってやってねフレディさん」
「えええ、あ、はい」
そういうわけで、二人でお弁当をいただきます
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