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おかしいっ…何かが、おかしい!
私は洗面台の前で両腕をついて立ち、排水溝の穴を見つめながら動揺していた。心臓が、苦しい。嫌な胸騒ぎに、心音が速くなる。
腕時計以外にも気になるものはあったんだ。去年の日付けから捲られていない卓上カレンダー。二人暮らしにしては少ないゴミの量。そして、この洗面台…男性物の小物はあるのに、男性が使った形跡が見当たらないのだ。シェーバーとか男性用ワックスなど、薄らと埃を被っている。これは長い間、使われていない証拠だ。
もし、もしも…Aちゃんの彼氏は何かの事故で亡くなっていて、それを受け入れられないAちゃんが、彼氏は生きていると思い込んで生活していたら?
そうすれば、彼氏の写真を見せてくれないことにも、血だらけの壊れた腕時計が置いてあったことも、全てに理由がつく!
Aちゃんは、心を病んでいる…?
ふと、また、誰かに見られている感覚。私は排水溝を見つめたまま、顔をあげられなかった。
誰かが、私の後ろに立っているのだ。
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