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◇ ◇ ◇
≪チップを受け取ったわ≫
「ここまでは順調ですね。では事務所でお待ちしています」
≪わかっているわ。え、ちょ、ちょっとまって––––≫
そこまで言うと通話にノイズが混じる。アクシデント発生か、しかし通話は切れていない、雑音が混じり声も遠いが何とか会話は聞き取れた。
「ザック! あなた今は会議じゃなくって?」
「マーガレット嬢、ごきげんよう。こんなところでお目にかかるとは。いえ、必要な書類が足りなくてね、秘書を探しているんだが見当たらなくて……」
「あ、あらそうだったの! 彼なら今はエントランスにいるんじゃないかしら」
まずいな、とノアが眉間に皺を寄せると、予想通りの返答が無線越しに聞こえてきた。
「何故私の秘書の居所を貴方がご存じなのですか?」
「それはその…… 先ほどエントランスで偶然お見掛けして! 簡単な世間話を交わしただけよ、本当に!」
暫くの沈黙の後、納得しきれていない声でアイザックが応えた。
「そうでしたか、貴重な情報をありがとう。早速行ってみます。 ……それから、マーガレット嬢。私は婚約者がいる身です、もう昔のように愛称で呼ぶのは貴方の名誉のためにも止められたほうがいい」
「えっ。そ、そうですわね! すみません私ったら、そんなことにも気が回せなくって…… 早く向かわれたほうがいいわ、秘書の方も移動されてしまうかも」
「そうさせていただきます。ではお元気で」
「お元気で。……アイザックさん」
「……」
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