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目を覚ましたノアは上体を起こし、顔にかかった前髪を気だるそうにかき上げた。暫く寝ぼけていたかと思うと、立ち上がり顔も洗わずにデスクへ向かった。
今見た夢を出来る限り詳細に擬似夢として落とし込む。交わした会話、目にした光景、触れた感触、感じた温もり––––
この擬似夢日記はノアが擬似夢を制作する様になってから休むことなく付けられている。まだ技術が足りなかった頃は昔ながらに手帳に書き記していた。
音声の出来に納得がいかず修正を繰り返す。もっと温かかった、もっと優しかった、もっと愛情に溢れていた。もっと、もっと……
画面の向こうで微笑む男に、ノアは問いかけずにはいられなかった。
「父さん、どうして僕を捨てたんだ」
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