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目を覚ましたノアは、日課の擬似夢日記をつけるためにデスクへ向かう。
思い出したくもない夢だが、決して忘れてはならない記憶だ。この日の悲しみが今日の己を形作っているのだから。
見たくもない夢を見なくて済むという点においては、自分以外の人間を少し羨ましくも思う。ノアはデスクの上から二番目の引き出しを開けて、中から一枚の写真を取り出した。
父が少年を抱き上げて笑っている。
父とおそろいのアッシュグレーの瞳の少年。
僕ではない誰か
「僕は、今も待っているよ……」
父はノアの知らないところで、ノアの知らない幸せを掴んだというのだろうか。
今にも引き裂いて燃やしてしまいたいという気持ちを抑えて、ノアはその写真を宝物かのように大事に引き出しに戻した。
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