警察省

2/3
前へ
/189ページ
次へ
 この国を守る組織は警察省と警備隊の大きく二つに分かれる。「手を取り合って国民の安全を」というのは建前で、裏ではお互いの行動に目を光らせている。  警察省の上層部というのは、IDEOの夢欲しさに隠蔽工作だってお手の物な連中の寄せ集めなのだ。  一方の警備隊は、国を導くのは国民と、国民に選ばれた者達であるべきだ、という立場にある。正体を明かさない宗教団体に、この国の舵を取らせるべきではないと考える者が多い。  おそらくベンソン氏は、そんな対立構造や汚い裏側などを知らされていない人間の一人なのだろう。退職するまでその澱みに関わらずに済んだのは、不幸中の幸いなのかもしれない。 「ベンソンさんはIDEOのパーティーがある度に警備の指揮を任されてんだ。この間町でばったり会ってさ。久々に酒飲みながら話したら、奥さんのこととか仕事の話を聞けてさ」  IDEOが主催するパーティーの存在も知っていた。  催されるようになったのはここ数年。これも世代交代のために起きた変化だと考えれば納得がいく。若い世代が外にアピールしているのではないか?  レオなどは事あるごとに「潜入しちゃおうか?」と軽口を叩くが、政治家や企業のトップなど警戒心の強い者達の溜まり場に飛び込むのは流石のレオでも危険だ。  それをエリック一人でだって?
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加