Xデー

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Xデー

「なるほど、それは…… 危険ですね」 「だよ…… ですよねぇ」 「ふふ、良いですよ。敬語なんて使わなくて。私はもう貴方達のお仲間のつもりなので」 「じゃっ、お言葉に甘えて!」  ノアが立花に温かいコーヒーを差し出した。立花は一口啜ると、店で出されるような深いコクと味わいに感激する。 「潜り込むというのは難しいと思います。招待客は勿論、従業員の人数まで完璧に把握していると聞いています。どうでしょう、我が家にいらした変装の達人の手を借りるのは?」 「レオのことですか?」 「ええ、私もそこまで馬鹿じゃない。娘の家庭教師の顔くらいちゃんと覚えていました。でもあの日、まさかボディーガードと家庭教師の彼が同一人物だったとは全く気が付かなかった。彼の変装術なら十分通用しますよ」 「レオが師匠に化けるってことか」 「いや、お師匠さんのメイクをエリックさんに施すのがベストですね。ただ見た目を変えるだけじゃ、一緒に働く同僚にバレてしまう。普段から警備隊長として指示を出している貴方なら、隠し通せるのでは?」  IDEOへの潜入、想像はしても具体性を帯びなかったそれが、急加速で現実味を増している現状にエリックの表情は強張った。  ノアも同様に不安を拭えないでいる。 「エリックは使えないわけじゃない、だが、彼は出来る方でもない」 「はっきり言うなよなぁ!?」 「おだてたって仕方ないだろう。失敗は命取りだ、言葉の綾なんかじゃない」 「……」 「……」  沈黙する二人に変わり、立花が口を開いた。
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