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地球から何億光年離れた場所に、名もない星がある。
その星の住人は絵を描き、歌を唄い、映画を作ったりする。
なぜ自分がそんなことをしているのかと疑問に思うものは誰もいない。
ただ、作り続けているのだ。
それも、眠りながら。
永遠に夢を見続ける星の人。
それが、老人の見た星だったのだ。
老人の名はアルクという。
アルクは人類の中で、ちょっとした有名人だった。
一つはよく眠るということ、
もう一つは長寿ということ、
そして最後に、性別がない、ということで有名だった。
星のことを口にするようになったのは120歳を過ぎたあたりからだった。
「星が、星が」
とつぶやくので、周りの人達は老人がボケたのだと思っていた。
老人は自分のことをボケたとは思っていない。
シンプルになったのだと思っていた。
たとえば、人は赤ちゃんの頃は多くの脳細胞を持っている。
それが成長の過程で無駄なものを排除し、必要なものだけが残るようになる。
アルクは、自分にとって必要な神経回路だけが残っていったのだと思っていた。
アルクは死ぬまでの間に、どうしても「星」を見たかったのだ。
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