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別に『良い嫁』を演じるつもりは無い。
お義母様とはこれから長く付き合っていくのだ。
最初から無理をしてはいけないとわかっている。
だけどね、
やっぱり作って出していただいた食事は、残さず食べるべきだと思うの。
だけどね、
月に1度、義実家のお食事に招かねるたびに、私の苦手なモノが混じったメニューが必ず1皿あるのよ。
前回は梅肉サラダ。
前々回は豚肉とシソとチーズの挟み揚げ。
今回は…鯖の具沢山味噌汁。
私は子供の頃から『梅干』と『シソ』と『サバ缶』だけは食べられない。
最初からカミングアウトしておけば良かったとは思うけど、まさか最初からピンポイントでソレが入ったメニューが出てくるなんて思わなかった。
もしかして旦那がお義母様に、私の嫌いなものを伝えたとか!なんて一瞬疑ってしまったけど、そもそも旦那は私が嫌いな食材を知らない。私が食卓に出さないから。
香りを嗅いだだけで、唾液が引っ込み、喉が拒絶する。
それでも前回と前々回は、無言になりつつも最初に一気に平らげた。
挟み揚げなんて、シソさえ入っていなければきっと、もの凄く美味しかったと思う。
「さっ、沢山作ったから食べて食べて~」お義母様が笑顔で勧めてくる。
「あ、美味いなコレ」と、旦那は喜んで鯖の味噌汁を食べる。
汁だけでなく、大根、人参、厚揚げ、コンニャク、里芋…全ての具材に鯖臭さが染みついているのだろう。
大きな汁椀に山盛り。
攻略できる気がしない…。
それでも私は笑顔で「いただきます」と箸をとる。
食べるのは鯖じゃなくて、お義母様の愛情だ。
そう言い聞かせ、私は『好き嫌いのない嫁』を演じる。
「…美味しい」
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