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「叶和くん、おはよ!」
朝もはよから元気いっぱいの内田ハルから声をかけられて、僕は読んでいた小説から目を上げた。
「おはよう、ハルちゃん」
「今日は何読んでるの?」
「薔薇の館殺人事件」
「うわ、難しそう」
「なかなかおもしろいよ?」
「あー、だめだめ。あたし、ラノベも無理。文字大っ嫌い」
「そんなこと言ってるから、この間の小テスト点が悪かったんでしょ」
「ああああああああぁぁぁ、思い出させないでよ」
しゅんとなるハルちゃん。
赤点は確実だ。
「ねえねえ、それよりも聞いた?」
「ん?なにを?」
「転校生がうちのクラスに来るって!」
「へぇー、こんな時期にめずらしいね」
季節は初冬。
秋のイベントも終わり、お正月までのんびり出来る。
冬休みは何人かの友達とスキーに行く予定もある。
「叶和くん、どっちだと思う?」
「ん?何が?」
「転校生が男か女か気になるじゃん」
「べつにどっちでもいいんじゃないかな。仲良く出来れば」
「もう、叶和くんテンション低い!」
「落ち着いてるって言ってよ」
僕は苦笑する。
ハルちゃんは小さな子供のように、目を輝かせていた。
「どっちにしても、陸上部には入ってもらうわよー!」
「あれ?陸上部ってまだあったの?」
「まだあるわよ!……部員4人しかいないけど」
「それって同好会じゃない?」
「叶和くんが入ってくれれば問題ナッシング!」
「いや、問題ありまくりだけど」
僕はひっそりと図書室で本を読んでいたい。
ふと、バスの外を見た。
背の高い少年が、見慣れない制服を着ていた。
(誰だろう?)
何か懐かしい気がしたが、学校前でバスが止まり、おりたときにはすでに少年の姿はなかった。
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