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ゆーやけこやけでひがくれてー
やーまーのおてらのかーねーがなるー
家に帰る時間を報せるチャイムが鳴る。
僕はもっと遊びたかったけど、みーちゃんははやく帰らないとママに怒られてしまう。
今日は服を汚してしまったので、めちゃくちゃ怒られるのだろう。
みーちゃんはいつもならダッシュで帰るのに、今日はなぜかもじもじしてる。
「みーちゃん、チャイム鳴ったよ?」
「うん……」
「はやく帰らないとママに叱られちゃうよ?」
「……うん……」
「みーちゃん?」
みーちゃんの様子がおかしい。
落ち込んでるのは、服を汚したせいではないかもしれない。
「とわくん、とわくんはみーのこときらい?」
いきなりそんなことを聞かれ、僕はきょとんとしてしまった。
「僕、みーちゃんのこと大好きだよ?」
「ほんと?」
「うん、ほんと」
「じゃ、ちゅーして?」
「ちゅー?」
「うん」
目を閉じたみーちゃんの唇に、僕はキスをした。
これが僕にとっての初めてのキス。
みーちゃんは嬉しそうに笑って、バイバイと手を振った。
その笑顔がなんだかせつなくて、胸の奥を熱く焦がした。
その翌日から、みーちゃんは公園に遊びに来なくなった。
僕はみーちゃんの家に行ってみたら、そこにはもう、みーちゃんはいなかった。
あとから知ったが、みーちゃんのママが若い男と家を出ていき、パパから虐待を受けていたみーちゃんは、施設に入ったそうだ。
それから10年、僕の心には未だにみーちゃんが住み着いている。
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