君の涙

1/24
前へ
/24ページ
次へ
ゆーやけこやけでひがくれてー やーまーのおてらのかーねーがなるー 家に帰る時間を報せるチャイムが鳴る。 僕はもっと遊びたかったけど、みーちゃんははやく帰らないとママに怒られてしまう。 今日は服を汚してしまったので、めちゃくちゃ怒られるのだろう。 みーちゃんはいつもならダッシュで帰るのに、今日はなぜかもじもじしてる。 「みーちゃん、チャイム鳴ったよ?」 「うん……」 「はやく帰らないとママに叱られちゃうよ?」 「……うん……」 「みーちゃん?」 みーちゃんの様子がおかしい。 落ち込んでるのは、服を汚したせいではないかもしれない。 「とわくん、とわくんはみーのこときらい?」 いきなりそんなことを聞かれ、僕はきょとんとしてしまった。 「僕、みーちゃんのこと大好きだよ?」 「ほんと?」 「うん、ほんと」 「じゃ、ちゅーして?」 「ちゅー?」 「うん」 目を閉じたみーちゃんの唇に、僕はキスをした。 これが僕にとっての初めてのキス。 みーちゃんは嬉しそうに笑って、バイバイと手を振った。 その笑顔がなんだかせつなくて、胸の奥を熱く焦がした。 その翌日から、みーちゃんは公園に遊びに来なくなった。 僕はみーちゃんの家に行ってみたら、そこにはもう、みーちゃんはいなかった。 あとから知ったが、みーちゃんのママが若い男と家を出ていき、パパから虐待を受けていたみーちゃんは、施設に入ったそうだ。 それから10年、僕の心には未だにみーちゃんが住み着いている。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加