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「これ、お兄さんが盗んだもので間違いないね?」
署に連行され、狭く机と椅子だけの殺風景な部屋で取り調べを受ける。
初めての犯行、きっとなんとかなるはずだとタダノブは素直に罪を認め「生活苦で」と警察官の涙を誘った。
「初めて、ねぇ」
取り調べを担当する強面の男は、写真を机の上に並べた。
「これは、むこう町のおばあちゃんが盗難届を出したもの」
そこには、キラリと輝くダイヤの指輪の写真が。
「これは、中華料理屋の骨董好きの親父が探している壺」
なにやら見覚えのある壺の写真が。
「こっちは、地主の家から消え去った金の塊」
げげげ!金塊の写真が。
「初めてじゃないよね?あちこちからくすねてきちゃって。言い訳はできないよ」
タダノブは青ざめた。確かに同じ家から盗んできたものなのにどうして?
「刑事さん!違うんです!!本当に同じ家から盗んできたもので」
「そんなわけないよ。それに、その家から盗難届が出てるよ。お前さんがポケットに入れていた時計。それも、持ってきちゃったんだろ?」
『連続強盗犯逮捕!!』
地方紙の片隅に掲載されたタダノブの顔写真が「こんなはずじゃ」と泣いているように見えた。
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