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不景気が続く世の中で、路頭に迷った男がひとり。タダノブはなれない手付きで、トアノブについた鍵をほそいほそい針金でガチャガチャといじる。カチリと音がして、ドアノブをそっと回すとドアが開いた。
古びていながらも、駐車場には外車が停まるこのアパートに初めての盗みに入ることにした。そして、一番奥まった目立ちにくい部屋へと狙いを定めた。
タダノブはそっと部屋に入り、物色を始める。すると、窓際にある本棚に目がいった。
そこには、高価そうなものがいくつも並んでいた。
ダイヤの指輪や、みたこともない壺、これは金塊?!タダノブは鼻息を荒くしながらもってきたボストンバッグにそれらを詰めていった。
家を出ようと玄関まで戻ったとき、下駄箱の上に高価そうな腕時計を見つけた。これもいただこう、とポケットに突っ込んだ。
初めてながら、良い家を見極められたと満足げにこの家を後にした…のもつかの間
帰り道で挙動不審なタダノブに、2人の警察官が声をかけてきた。
「こんにちは、お兄さん。少し、荷物を見せてもらっても?」
ニカッと笑う警察官に抵抗する術を持たないこの男は静かに指示に従った。
「これはー何かな?指輪に壺に、金!?お兄さんのものかな?なんでこんなもの持ってるの?」
警察官に質問され、言い訳を考えてみるも なにも思い付かない。質問の答えを待たずにもう一人の警察官が応援を呼ぶ。終わった、タダノブは天を仰いだ。
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