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簡単に気を失わせない。僕が苦しんだ数年間の恨みを込めて、身体中を切り刻んでいく。薄っすらと、けど痛みは感じるくらい。声がうるさいからハンカチを口に押し込んだ。右腕に麻酔を打って感覚を無くすと、刺身を切るように肉をそぎ落としていった。麻酔が切れたら激痛だろう……楽しい。最高だ。この日のために生きてきたんだと思える。一瞬の死なんて苦痛を感じないじゃないか。何時間もかけて苦しみを与え続ける。僕はその苦しみを何年も味わってきたんだから。謝って解決するなんて、ただの自己満だろう? そして僕は少しずつ少しずつ痛みを与え続けた。このハンカチを取ったら、彼が何て言うか想像できて笑ってしまう。僕ならきっとそう言うから。君はさっきとは全く違う言葉を言うのさ。もう虚ろな眼をした彼の口元のハンカチを取り出す。
「……何か言いたいことはあるか?」
「…………頼む……もう殺してくれ……」
――あぁ神様、この僕にノートを落としてくれて感謝します――
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