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「パンですね。コンソメスープとコーンスープはどちらになさいますか?」
なんでこうも多くの選択肢があるのだろう、とヤヨちゃんは思う。
コーンスープの文字をぐるぐる。
ふう、と息を吐き、次に自身の注文を指差す。ステーキ定食。
「ステーキ定食ですね。こちらはご飯のみとなりますが、よろしいですか?」
ヤヨちゃんは頷く。よろしい、よろしい、なんでもよろしい。
「ソースは和風と洋風ございますが」
店員の声が早くなる。別の席の呼び出しボタンが鳴ったからだ。そちらへ顔を向け、お伺いします、と返事をする。ヤヨちゃんへ顔を戻し、見たら分かるでしょ、というように乱暴に端末を操作する。
ヤヨちゃんは和風と書かれた文字を指差した。
どちらですか? と店員の顔が近付いて来る。思わず、ひい、と声が出そうになる。
和風と洋風は文字が小さくて、一体どちらを指差しているのか分かりづらい。指先を小刻みに動かして、和風を強調。
洋風ですか? とやはり顔を近付けたまま店員が言った。
ヤヨちゃんは首を横に振る。
じゃあ和風ですね、と言って店員の顔が遠ざかる。
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