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そうそうそう、とヤヨちゃんは力強く何度も頷いた。
そのまま店員は注文を繰り返さず、かしこまりました、も言わずヤヨちゃんの座っていたテーブルから離れて行った。
ヤヨちゃんはコップの水を手に取り、一気に飲む。
そこで周囲の音が大きく聞こえた。走る音。氷の音。ドリンクを注ぐ音。笑い声。フォークとナイフが食器に当たる音。
頭を強く打ったみたいに目の前が真っ白。ずれ落ちた眼鏡は、鼻の頭まできていた。
「注文してくれた?」
そこへ今頃帰って来た友達のカエデ。放心状態のヤヨちゃんの目の間で手の平を振り、意識を確認する。
「おーいヤヨ、生きてるー?」
それで我に返ったヤヨちゃんは先程までが嘘のように喋り始める。
「カエデ、遅いよ。マジで地獄だったんだからね。店員に変な目で見られるし、挙句の果てにはイライラされるし。だいたいね、呼び出しボタンを押したのはカエデでしょ。こっちはてっきり注文してくれると思うわけじゃん。押すだけ押して、後は注文しといて、はダメだよ」
身を乗り出し、今にもカエデに飛び掛かりそうな勢い。
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