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そこへ丁度、先程の店員が通りかかって、隠しもせずに不審な目を向けて来た。なんだ喋れるじゃん、と店員の目は言っていた。
ヤヨちゃんはその目に委縮して、ソファに座り直す。水を飲もうとしたら、コップは空だった。
ごめんごめん、とカエデは苦笑いしながら自分のコップをヤヨちゃんの方へ。
「ヤヨの人見知りがここまでひどいとは、思ってもみなかったよ」
ヤヨちゃんは極度の人見知りだ。知らない人と話すことはもちろん、道を歩いたりこうやってお店に入ることも躊躇してしまうほど。友達とならなんとか大丈夫だ。
お休みの日はほとんど家から出ないし、外へ出なくてはならない時は、イヤホンをして、身を縮こまらせて、下を向いて「私は小石だ。人から見向きもされない小石なんだ」と心の中で呟きながら歩く。
けど、とカエデが言った。「人見知りのくせに美味しい物が大好きなんだよね」
ヤヨちゃんは何よりも美味しい物が大好きなのだ。テレビでグルメ特集がやっていると必ず見てしまうし、YouTubeで登録しているのは、ほとんどが食べ歩きなどの食に関するチャンネルだし、実際に気に入ったお店があると足を運んでいる。
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