ヤヨちゃんは「ごちそうさま」が言えない

前菜「ヤヨちゃんは、注文が言えない」

　今日のように友達と時間を合わせられればいいのだが、毎回そういうわけにもいかず、かといって一人で行くのは勇気がいる。
　だからヤヨちゃんは必ず事前にお店の下見へ行く。一日かけてお店を確認し、混んでいる時間帯を調べ、なるべく客足が引いた時間を狙うことにする。
　今日のように注文をする時はメニューを指差しすればいいのだが、出来れば食券システムがあればいい。それなら一言も発さずに美味しい物にありつける。
　ちなみに美容室に行けるわけもなく、あそこは陽キャの人間しか行けないのだと勝手に思い込んでいて、髪は１０００円カットで済ませている。
　それでもオーダーする時は美容師さんと話さなければならないので、いつも紙に書いて渡している。

『今の感じのまま五センチくらい切ってください』という紙だ。

　だからヤヨちゃんは、いつもショートヘアー。頭の形のせいなのか少しだけ丸みがある。
　カラーも入れたことがないので、ブラック。