前菜「ヤヨちゃんは、注文が言えない」

8/17
前へ
/241ページ
次へ
 対してカエデは一年中落ち着きのない髪色をしている。  ショートボブは一か月前にレッドだったと思ったら突然ブラックになり、冒険しすぎたと本人も言っていたがグリーンの時もあった。  そして今は、落ち着きのあるシルバーカラーだ。  ヤヨちゃんはカエデから差し出された水を一気に飲み、「美味しい物は私の生きるための(かて)なの」と言った。  大袈裟だね、とカエデが笑った。「それにしてもファミレスに行ってみたいなんて、今日はどうしたの?」 「小さい頃に何度か行っただけで、もう何年も行ってなかったからさ、最近のファミレス事情というやつを知りたかったわけだよ」 「ファミレス事情って。別に今も昔もそんなに変わってないと思うけどね」  ところで、とヤヨちゃんは再び身を乗り出す。「あそこにあるドリンクバーは、料理を頼めば飲んでいいものなの?」 「私達が頼んだセットメニューの中に含まれてるから、飲んでも大丈夫だよ」  あのさ、と更に身を乗り出す。お腹がテーブルに乗る。行儀悪いよ、とカエデに注意されて慌てて元へ戻る。 「コーラとかカルピスとかオレンジジュースとか、なんでも飲み放題なわけ? 漫画喫茶みたいに」
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加