苦手な先生

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 私は、中休みと昼休みの大半をここで過ごしている。友達が嫌いな訳ではないけれど、休み時間くらいゆっくりしたい。一人でぼーっとする時間が私には必要なのだ。いつものように腕を組んで、目を閉じる。静かな空気の中に、外で遊んでいる子達の元気に騒ぐ声と、暖かい日差しがぼんやり届いて混ざる。この距離感が丁度いい。私には、これくらいの方が。    心地良い空気感に浸っていると、トン、トン、トン、と足音が聞こえた。すぐ下の階は六年生のクラスがあるのだから、そういうことはよくある。でもみんな、外へ出るために降りていく。だからいつものようにすぐに遠くへ行くだろう、と思っていたその音は、徐々にこちらへ近づいている。卒業まであと少しという所で秘密の場所がバレるなんて、惜しいような気はするけれど、まぁ別に屋上へ立ち入ってはいないし、悪いことはしてないよね。なんて開き直ったところで相手の姿が見えた。 「やっぱり、ここにいたんだ」  得意げな、そして意地悪そうな顔で担任の青木先生は言った。 「やっぱりって、どうして私がここにいることを知っているんですか」 「見たことあるんだ。休み時間の終わりに、階段から降りてくる木下を。だから知ってた。休み時間、いつも一人でここにいることを」  それってかなり前からバレていたのか。ならどうしてその時に注意やなんかしなかったんだろう。
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