喪失と

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 朝食を取り終えて出かける準備をすると、私たちは車に乗り込んだ。モールのある郊外に近づくと、都会の狭苦しさよりも解放感がある。    目的地に着いてからは、私がちょっとでも目を止めた物をすぐに買おうとするおじいちゃんを説得するのに必死だった。  お小遣いで買うには高めのペンケースといい紙のスケッチブック。それから服を何着か。ここでお互いの妥協点とした。 「遠慮するなと言っているのに」 「してないって。毎年誕生日にもクリスマスにもたくさん貰ってるもん」  なんとか祖父の爆買いを引きとめて、夕食の買い物をして帰ることにした。今夜は特製のポテトサラダを作ってくれるみたいだ。高学年になってから炊事は主に私の担当だけど、それまでは祖父が毎日作ってくれていた。おじいちゃんの作る料理はおいしいから、楽しみだ。    家に着くと、さすがに少し寒かった。暖房をつけて、荷物を運ぶためもう一度車に戻る。  ずっしりと服の入った袋を持って、玄関前まで来たところで、車の鍵を閉め忘れたことに気がついた。
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