3月1日

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思わず頭を上げて部屋を見渡すと、 一人のとても小さな男の子が机の上に立っていた。 身の丈ほどある大きな白い袋を抱えた彼は、私をじっと見上げていた。 ーーー 「時の…妖精さん?」 「そうなのだ!」 彼はニコニコと笑顔を私に向けた。 白い袋の取っ手を持ち上げ、私に手を振る彼は、 自らを『時の妖精』と名乗った。 にわかには信じられない。 けれど、彼の小さな体とその白い袋の中身を見た時、 その気持ちが少し揺らいだ。 彼の袋の中には、沢山の金色のプレートが入っていた。 そして、その表面には時間が刻まれている。 「20XX年5月1日」のように。 「このプレートを使って、時間を届けるのだー!」 そして、彼は「20XX年3月2日」と書かれたプレートを掲げた。 …明日のプレートだった。 そのプレートを見た瞬間だ。 彼を訝しむ気持ちがある感情に埋め尽くされた。 「…ねえ、妖精さん?」 「なんなのだー!」 「私、どうしても来て欲しくない日があるんだけど、どうしたらいい?」 もしかしたら何か上手いやり方を、時の妖精さんなら知ってるかもしれない。 ほとんど冗談のような質問だったが、彼はその答えを私に教えてくれたのだった。 「その日のプレートを泥棒しちゃえばいいのだー!」
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