0人が本棚に入れています
本棚に追加
3月3日
朝起きると、私は3月3日にいた。
ベッドの上の置き時計が3月3日を示していたのだ。
当然ながら3月2日の記憶は私にはなかった。
起き上がった私は、妖精さんに昨日のことを尋ねる。
すると、妖精さんはすらすらと昨日のことを話した。
いつも通り私が起きたこと、私がいなくなったあと一人で遊んでいたこと、
そして家に帰ってきた私が変なことをしていたこと。
「変なこと?」
「尖った針を何度も刺してて怖かったのだ!!」
ぶるぶると震え出す妖精さん。
尖った針…?
ぶるぶると震えたきり、妖精さんは黙り込んでしまった。
私は彼の頭を軽く撫でると、部屋を出た。
ーーー
年長組の保育室に着くと、私は無意識のうちに美雪ちゃんを探した。
彼女は窓際の少し遠い場所で、他の女の子たちと話していた。
その様子をしばらくの間、見つめていると、彼女が不意にこちらを見た。
しかし、目を伏せるとすぐに女の子たちの方に向き直る。
『はなみーー!ねえ、これ見てー!』
私を見ると、すぐに駆け寄って、話しかけてきてくれる美雪ちゃんは、もういなかった。
ぎゅっと締め付けられる胸を押さえて、私は彼女から視線を外した。
彼女と積み上げてきた日々は、
たった一つの間違いでこんなにも簡単に崩れてしまう。
それが私は無性に寂しかった。
最初のコメントを投稿しよう!