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――い、い、いやだ!死にたくない、死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないっ!!
あの悪夢が、呪いのせいだったのか、あるいは私の逞しい妄想の産物だったのかは定かではない。というのも、私は翌日、学校でその人形を別の人に押し付けることに成功したからだ。
クラスメートの鞄にこっそり入れる、なんてこともできず。かといって、友達の誰かを騙して渡すこともできず(そもそも咲絵が知っていたくらいだから、同じ都市伝説はみんな知っていてもおかしくはない)、結局迷った末教室の、先生の机の中に突っ込むことにしたのである。
これで、人形は先生に“押し付けた”ことになると信じて。
その担任の先生のことは好きではなかったし、先生が見つけたならばきっと落とし物として職員室にでも届けると思ったのだ。それなら、持ち主もあやふやになって呪いも矛先を失うだろう、と。
――呪いが本当にあったかどうか。結局、それはわからなかった。でも、その数日後に……先生は交通事故に遭って、大怪我をした。
呪いのせいか、偶然だったのか。結局、謎は謎のまま終わってしまった。ただ。
「気にすることないよ、綾子。原田センセーってマジでウザかったしキモかったじゃん?あたしらも目の敵にしてたしさー、自業自得だって」
「……うん」
私は、私を慰めてくれる咲絵の顔を真正面から見ることができなくなっていたのである。
後になって、気づいてしまったからだ。そもそも、あの人形はいつ、どこで私のバッグに入れられたのかと。
――あの日、私は何度もバッグを開け締めしてた。人形のあのサイズで、存在にすぐに気づかないなんてことはありえない。ていうか、スマホを出した時にだって気づいたはず。
ということは、あの人形が入れられたのはカラオケ店ではない。
そして、そう前のことでもない。私がトイレに立つ直前に捩じ込まれたと考えるのが妥当だ。そして、レストランのあの席でそんなことが可能だったのは――。
――私、そんなに恨まれてたの?クスリとか、やばそうな遊びとかの誘いを断ったから?ねえ、私が本当に呪い殺されてもいいとか、そうでなくても怖がって苦しめばいいと思うくらい、私のことを……?
結局、私は咲絵に真実を問う勇気はなかった。
咲絵とは、卒業を最後に一度も会ってはいない。
本当に恐ろしいものはきっと、悪霊や悪魔ではなく、身近で笑っている顔の中にあるのだ。
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