おしつける。

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おしつける。

 これは、私が女子高校生だった頃に起きた怖い話。  その頃、私は結構な不良娘で、親への反発もあって夜遅い時間まで友達と街歩きすることが少なくなかった。試験だの受験だの、一体将来の何に役に立つのかわからないような勉強をなんでしなければいけないのか。そんなものをして良い大学とやらに入って何が変わるのか。それでどうして、幸せとやらが確約されるのか。  まあ、そんなことをグダグダ考えて、毎日友達の、特に咲絵(さきえ)と遊び歩くことが少なくなかったのだった。将来やりたい仕事とか、そういうビジョンがまったくなかったのもあるだろう。  同時に、人のせいにするわけではないが、咲絵と高一からツルむようになったのも大きい。彼女も彼女の友達も、ヤンキーに片足突っ込んだギャル系女子ばっかりだったのだ。こっそり煙草を吸うくらいは当たり前。実は咲絵も友人たちも、ウリとかクスリくらいはやってるんじゃないかって噂があった。実際、私もヤバそうな薬を勧められて断ったことがあるくらいだ(痩せ薬、だなんて言われたけど明らかに嫌な予感がしたので、こっそり捨ててしまったのである)。  まあ、結局彼女たちの誰かが逮捕されたわけでもなく、噂の何処までが真実だったかは定かではない。私が見たのは精々、彼女たちが煙草を吸っていたくらいのものであったからだ。私は吸わなかったが、こっそりお酒を飲むくらいのことはしていたと白状しておく。  で、ここまでが大前提。  私はその夜も、咲絵と一緒に夜までカラオケをして、深夜まで営業しているレストランで駄弁っていたのだった。  奇妙な出来事は、私がトイレに立って暫くした後に起きたのである。 「あれ?」  私は自分のバッグを見て首を傾げた。ちなみに、トイレに行っている間鞄は椅子に置いていっていたことを伝えておく。スマホだけ持ってトイレに立つのは珍しいことではなかった。一人で来ていたならまだしも、向かいの席には咲絵が座っている。彼女のことは信頼しているし、そうそう財布が盗まれることもないだろうとタカを括っていたからである。  だから、バッグの中を見て驚いたのは、何かが無くなっていたからではない。  むしろ逆だ。バッグの中に、見覚えがないものが入っていたのである。 「何だこりゃ。キモい人形?」 「んー?」  咲絵は行儀悪くテーブルに足を乗っけて、スマホを弄りながら言った。 「綾子(りょうこ)ぉ、どうしたん?あたし、そろそろデザート食べようかなーって思ってんたけど。あ、それとももう一杯ビールいく?」 「私はいいや。つか、そもそもアンタほどお酒好きじゃないし」 「えー、マジもったいなー」
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