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先程まで感じていた違和感は、これが原因だろうか?
根拠は目利きとしての勘のみだ。
素人が作った物でも売れなくはないが、それらの骨董品からはどうしても別の意図を感じてしまう……。
考えていても仕方ない、俺は二階へと上がることにした。
……部屋は三室。他、一階にもあったが便所が一室。
婆さんがいるであろう事から慎重にならざるを得ない。
セオリーに則り順次、近くの部屋から見て回る。
俺はドアノブに手をかけゆっくり引くと、一寸先の闇をペンライトで照らした。
……どうやら寝室ではない様だ。だが、ここにもお目当ての物は無い。
それでも、ロッキングチェアー脇の窓際で存在感を放つ木彫りのクリスマス人形や、本棚の上に飾られたアンティーク調の小物入れに目が留まる。
見た感じどちらかというと、それらからは小洒落たというより子供向けといった印象を受けた。
ふと、また脳裏を妙な違和感がよぎる……。
懐かしい様な物悲しい様な……。
何かの線と線が結びつきそうで一つにならない。
はは、今日はどうかしてる……。
仕事は、出来るだけ軽いノリをモットーに遂行したかったが、今回そうはいかないらしい。
俺は一呼吸置きモヤモヤとした思いを払拭する様に、次の部屋へ向かった。
だが、そこでまた息を呑む事になるとは――。
扉を開けた時の僅かな風の動きからか、木彫りの馬や星などが吊るし飾られたベッドメリーが揺らめいている……。
これは……。
そのすぐ真下、揺り籠の周りを数えきれない程の人形が埋め尽くしていた。
孫がいるのだろうか……いや、というよりは……。
俺は心の中で次の言葉を遮った。
余計な詮索はいい。やるべき事は一つだけだ。
何も考えないようにして、その場を後にする。
さて、残るは最後の部屋だが……何故か胸がざわついた。
いや、それが必然かもしれない。そこに依頼品と共に婆さんがいる事は勿論、この家に何かしらの因果があるであろう事は間違いない。
そう俺の勘が言っていた。
だが、こういう時少しでも戸惑えば行動に支障をきたす。再度、俺は頭を空っぽにし最後の扉を開いた。
そして次の瞬間、完全に言葉を失った――。
隙間風に吹かれ優しく靡く透き通ったカーテン。
その窓辺から零れる月の光が真っ白な世界を仄かに照らしている……。
ベッドで誰かが眠っていた。何もない病室の様な部屋で一人、恰も死んでいるかの様に……。
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