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俺はすぐさま、裏口の扉を開け放ち飛び出した。
その後、裸足のままどこを走ったのか覚えていない。
気付くと、息を切らしながら街灯の当たる場所に立っていた。
「はぁ……はぁ……どこだ、ここ……」
依然とし、片手には依頼品の鍵入れを持っている……。
……ん?
よく見ると、鍵入れの台座の部分に銀のプレートが貼ってあり、文字が彫ってある。
【禁忌は心から――】
「……」
俺はペンライトを消して依頼品と共に仕舞い、サイドバッグから靴を取り出した。
あの爺さんに事情を聴いてみるか……。
明朝にかけ街灯の明かりを頼りに歩く街は、いつも以上に静かだった……。
――あれから三週間後。
依頼者である老人の訃報を聞いたのは三日前だった。
どうやら、癌を患っていたらしい。そっちの専門家に調べさせたら孤独死していたところを異臭が原因で近隣住民に発見されたそうだ。
今日、その老人から送られてきた段ボールの荷物がここ、何でも屋もとい盗み屋の元にある。
……話は遡るが二週間前、老人から手紙が来て、体調不良を理由に依頼品は郵送で送ってほしいとの事だった。
依頼料はまだ貰っていないが、このままではどのみち支払われる保証は無い。仕方なく俺は依頼品の鍵入れを老人宅に送る事にした。
そう、あれ以来、音沙汰無く今に至るという訳だ。
やれやれ、ただ働きか……。
にしても、あの爺さん。何であんな物が欲しかったんだろうな。
鑑定するまでもなく、それほど価値のある物では無い。
俺は、金目の物でも入っているのかと淡い期待を抱きながら目の前の段ボールに手を掛けた。
すると……。
「な……」
何と中に入っていたのは、あの時の鍵入れだった。
箱の底には手紙も添えられている。
すぐさま、それを手に取り封を切った。
なになに……。
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