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そんな焦りの中、わたしたち『わたドラ』はある転機に差し掛かっていた。
今年の二月にリリースした配信限定の楽曲、『ワタシノミカタ』。わたしが初めて作詞をした曲だ。今の気持ちを素直に書いた楽曲。
それがJKの間でじわじわと話題になり、SNSで流行り出した。
それをきっかけにして地元のラジオ局では何度も曲を流してもらい、多くの人の耳に届くようになった。
フォロワーは一気に増えて、ライブの動員数も多くなる。物販の売り上げはどんどん上がり、わたしたちの人気は鰻登りとなった。
その楽曲を引っ提げてエントリーしたのがこの、『アイドルフェスタグランプリ』だ。
毎年夏に東京で開かれる『アイドル×アイドルフェスティバル』。
全国区のアイドルたちが一堂に会するすべてのアイドルにとっての憧れの舞台である。
その『アイフェス』には新人枠として全国から一組だけが選ばれて出場することができる。
全国五都市、札幌、名古屋、大阪、福岡、そして東京。この五都市で予選が行われ、上位二チームが東京の本戦に出られる。
そこで勝ち上がった一チームだけが『アイフェス』に出られるのだ。それが『アイグラ』。
過酷なサバイバル。何が過酷かって、エントリーしても必ず予選のライブに出られるわけじゃないってところ。
エントリーをしてから予選出場チームが決まるまでの期間は、サイト上で人気投票が行われる。毎日一人一票。
ここ名古屋での参加グループは、全部で三百を超えた。
予選に出られるのは上位二十組だけ。
人気がなければ、予選にすら出られない。
すべて投票の結果次第なのだ。
幸いにも、わたしたち『わたドラ』はおととし、去年とギリギリ二十位で予選に参加している。でも、結果は惨敗。本戦には遠く及ばない。
今年は『ワタシノミカタ』がある。
得票数は上から五番目だった。
あとは本番で出し切るだけ。
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