ワタシノミカタ

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◇  ライブが大成功だったと言えるのはまだ早いのかもしれないが、わたしたちは確信していた。上位二組を狙える位置にいるはずだと。  予選ライブが終わり、事務所に集まったわたしたちは、その夜に更新されるサイトの情報を今か今かと待ち侘びていた。  会議室でパソコンの前に全員集まり、そわそわしながらその行方を注視している。  すでにSNS上では『わたドラ』のワードは上位に来ていて、ライブの反響の多さを実感している。 『わたドラ、来るぞこれ』 『今年はわたドラ推しだ』 『もう絶対絶対わたドラ行ってほしい』  その言葉一つ一つが嬉しくて、鳥肌が立つ。  午後九時。サイトに得票数が表示されると、『わたドラ』の名前は上から二番目の位置にあった。 「やっっっ」 「たぁあああー!」  自然と声が合わさってしまい、わたしたちは両手を高く上げていた。  マネージャーも事務所の社長も同じように喜んでいて、手を取り合って嬉しさを表現している。 「だけど、まだ安心するのは早いよ」  喜びの中、伊依理だけが冷静で。  そう、戦いはまだ終わってはいない。  過酷なサバイバルは、あともう少しだけ続く。  投票締め切りまではあと一週間ある。  それまでは投票が続けられていくので、この間に行う生配信や、握手会が結構重要だったりする。それで順位が入れ替わることだって当然あるのだから。 『わたドラ』の目下のライバルは二組。  現在トップの『i-deal』と三位の『蒼のシンフォニー』だ。  去年、二組とも本戦まで行った実力グループ。  この二組を蹴落とさないと上には行けない。何がなんでも、わたしたちが本戦へ行く。 「ここから一週間頑張って、絶対トップにいこう」  伊依理の声は勇気をくれた。  もう負けてなんていられない。  勝ち続けるだけ。 『あに恋』のキャプテンであるミカさんは、ある雑誌のインタビューでこんなことを言っている。 『私たちは、ずっと負け続けてきたんです。でも、諦めなかった。応援してくれるファンがいたから。その人たちのために、私たちはアイドルを続けてこられたんです。なんとか恩返しが出来ないかな、そう思ったとき、やっぱり勝つしかないって。勝ち続けるしかないって思って』 『あに恋』は『アイグラ』の初代チャンピオンだ。だから説得力がある。  彼女たちはその年、『アイフェス』に参加してそのまま一気に売れていった。    今度はわたしたちの番。  やるしかない。ここまで来られたんだから。もう、やるしかない。  わたしたちの決意はダイヤモンドよりも硬かった。
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