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再会
十年後の夏。
気温が高いうえに雨が降り続けるこの季節に嫌気が増していく。
そして、二人をさらに追い詰めていく今の状況に黒でさえ冷や汗をかいていた。
事の起こりは数時間前、大雨によって村が浸水し住めなくなったと言う人々が黒たちが住む屋敷へと避難して来たのだ。
人数は屋敷に入る程度だった為、新しい住処を見つけるまでの間、泊まることを許可した二人。
しかし、一人の女性がまるで化け物を見るように「…葉月じゃないか!」と指をさしながら叫んだ。
その女性は葉月の母親だったのだ。
髪が白く体もボロボロな女性のことを他人にしか見えない葉月は、状況が飲み込めず目を泳がせるしかなかった。
そんな葉月に構わず母親と自称する女性は、「葉月はあの時に死んだはず…どうして生きているんだい…?」と顔を青白くさせながら独り言を呟く。
その独り言に便乗するかのように村人たちは次々に「この男が生き返らせた」「鬼に生まれ変わって出てきた」などとあること無いことを言い始めた。
その様子に黒は内心焦りながらも、村人たちの言葉を止めさせる。
しかし、村人たちは止まるはずもなくさらに加速していく。
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