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信じる
殺伐とした雰囲気のなかでただ一人、彼女だけは黒を見つめていた。
安心して良いと黒に目で合図しつつ、村人の警告も無視して歩きだした。
ゆっくり、一歩一歩確実に。そして、ぴたりと止まった足先は黒のつま先にくっつくようで…。
「いつか貴方から教えてくれると信じていたのに…こんなかたちで知っちゃうなんて」
黒の頬を優しく触れながら悲しそうに呟く。
「私は裏切らないとあの時伝えたでしょう?」
「…すまない」
「ううん。ずっと騙されたふりをしていた私も悪いの」
「いや、葉月は待っていてくれただけではないか…!」
「それが悪いのよ。しつこいって言われても問い続ければ良かった…!そうすれば貴方をここまで苦しめずに済んだのに…」
葉月は涙を流しながらもう一度、ごめんなさいと呟いた。
「私はね、黒さんが人でなくても傍にいたいと思うわ。だから、貴方の思うままに行動して」
黒は葉月を抱えて、村人たちを押し退け屋敷を飛び出した。
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