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「そうか、葉月よ何故そんなに急いでいた?どこへ向かうつもりだった?」
「わたしは村を追い出されたの、どこか遠くに行きたくて…」
葉月は小さな手をぎゅっと握りしめた。
「行く宛てが無いのなら私の元へ来るか?」
「でも…」
「一人で退屈していたのだ遊び相手になってほしい。…それならば来る理由になるだろうか?」
黒にはわかっていた。葉月が躊躇っていること、素直について行く事を怖がっていることを。
だから、自分に騙されたと言い訳を作ることを許可したのだ。
「黒さんがどうしてもと言うなら…」
「我儘なのは嫌いではないが、疑い深いと生きづらくなるぞ?」
言い訳を提示したとしても簡単についてくるはずがないと、黒にはそれすらもお見通しだった。
「だが、そうだな。私は葉月に''どうしても''一緒に来てほしいと思っている」
葉月は黒の手を取り軽く握った。そして、二人は暗く染まりつつある森の中を歩き始めた。
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