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「黒さんは自分が嫌いなの?」
「いきなり重ための話をしだすのだな」
「だって、わたしにばかり優しくするから…」
「ふむ。気を遣っていたつもりはなかったんだが」
「そういう事じゃ無いんだけど…」
「……すまんな。まだ騙されていてはくれないか」
満月の綺麗な夜だった。月明かりに照らされた黒の顔には哀愁が漂っていた。
「黒さんはわたしを助けてくれた。だから、何があっても裏切らないよ」
葉月は両手を伸ばし、横に座る黒の腰をぎゅっと抱き寄せた。子供をあやす様に一定のリズムで撫で続ける。
「ふふ、これではどちらが大人かわからぬな」
「たまにはこういうのも良いでしょ!」
「あぁ…葉月には敵わないな」
何が敵わないのか、どうして葉月の傍は特別安心できるのか。一人でずっと生きてきた黒には知らなかった感情が芽生え始める。
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