給仕のはずだった

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給仕のはずだった

数ヶ月が経ち、黒の性格が改善されつつある頃。 洗濯を終えた葉月が物珍しそうに黒の頭からつま先までを眺めていた。 「そんなに見られていては、いたたまれなくなるのだが」 「だって…!その服!」 「これは燕尾服というものだ」 「えんびふく?」 「あぁ、西洋ではこの衣装を身につけ、給仕をするらしい」 「お世話をするってこと?」 「そうだ。だから私は今日一日、葉月のお世話をするぞ」 「えっ」 「なんだ、その腑抜けた声は」 「や、その…出来るのかなーって…」 「舐めてもらっては困るぞ。私も葉月と暮らし始めてから少しは成長したのだ。今日は葉月に癒しの時間をと思ってな」 普段とは違った印象を受ける黒に落ち着かない様子を見せる葉月。 そんな葉月に構わず言葉を続ける黒は片膝を地面につき、「さぁ、今日は全て私に任せてください。お嬢様?」と声色や口調を変え、囁きかける。
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