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少女と鬼の出会い
土砂が湿る道を裸足で走っていくのは口減らしに村を追い出された一人の少女だった。
少女は乱心したように走っていく。下り坂で滑っても岩に足が取られても構わず足を動かした。
目的地などあるはずも無い彼女はどこへ向かうというのか…
そこへ一つの声がかかる
『娘よ、止まるが良い』
やわらかく凛とした声とともに彼女の前へと現れたのは、肩まである黒髪を風になびかせた美しい青年だった。
「…あなたは誰ですか」
少女は足を止め、戸惑いながらも声を発した。
「私は……黒だ。娘こそ名はなんというのだ?」
「わたしは葉月」
これが幼い少女と優しい鬼の初めての出会いだった。
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